令和元年(2019年)8月27日、厚生労働省から、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-2019(令和元)年財政検証結果-」が公表されました。
公的年金制度は長期的な制度であるため、社会・経済の変化を踏まえ、適切な年金数理に基づいて、長期的な年金財政の健全性を定期的に検証することは、公的年金の財政運営にとって不可欠です。
そのため、厚生年金保険法及び国民年金法の規定により、少なくとも5年ごとに、国民年金及び厚生年金の財政の現況及び見通しの作成、いわゆる財政検証を実施することとされています。
今年は、財政検証の年ということで、「2019(令和元)年財政検証結果」、「オプション試算結果」及び「財政検証関連資料」が公表しました。
今回の財政検証のポイントを簡単に紹介しておきます。
●6つのケースを試算
○経済成長と労働参加が進むケース(ケースⅠ~Ⅲ)では、
・マクロ経済スライド終了時に、所得代替率は50%以上を維持。
・マクロ経済スライド調整期間において、新規裁定時の年金額は、モデル年金ベースでは物価上昇分を割り引いても増加。
○経済成長と労働参加が一定程度進むケース(ケースⅣ・Ⅴ)では、
・2040年代半ばに所得代替率50%に到達。
(その後も機械的に調整した場合、マクロ経済スライド終了時に、所得代替率は40%台半ば)
〇最悪のケースⅥでは、
・マクロ経済スライドによる調整を機械的に続けたとしても、国民年金は2052(令和34)年度に積立金がなくなり、完全な賦課方式に移行。
・その後、保険料と国庫負担で賄うことのできる給付水準は、所得代替率38%~36%程度。
●次のようなオプション試算も実施
○オプション試算A(被用者保険の更なる適用拡大)
→これを実施すると、所得代替率や、基礎年金の水準確保に効果が大きい。
○オプション試算B(保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択)
・基礎年金の加入期間の延長
・在職老齢年金の見直し
・厚生年金の加入年齢の上限の引上げ
・就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大
→これらを実施すると、年金の水準確保に効果が大きい。
結局、「経済成長と労働参加が進めば維持可能」という結果になっていますね。
「前回(2014年)の財政検証から目立った改善はみられず、制度改正や高齢者の就労促進などで「支え手」を増やす必要性を強調する内容だ」といった意見もありますが、制度改正の必要性を訴える思惑もあるのかもしれませんね。
詳しくは、こちらをご覧ください。
<将来の公的年金の財政見通し(財政検証)>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html
※各種の資料のうち、とりあえずこれを見れば、全体像はつかめます。
・2019( 令和元 )年財政検証結果のポイント
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000540583.pdf